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WEBぺた 第162回

「2011」

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雪の鳥取から高知へ。
山を越え、岡山に着くと雪のゆの字もない。
日本はまだまだ広い。
このような旅をもう何年もずっと続けてきた。
ずっと歌が上手くなりたかった。
いい曲を作りたかった。
有名になりたかった。
誰の為に?
自分の為に。
自分達の為に。

自分を過剰に意識するのは表現者としての業(ごう)のような物だ。
あるいは性(さが)と言い換えてもいいけれど。
自分に自信のない表現者は、「表現し続ける事」は出来ない。
自信がないように見える人が表現者として現役である、とすれば
「自信がない自分を演出し、表現している」という事だ、とクールに思う。

まあ、他人の話はいいや。
ともかく僕はそういうスタンスで歌ってきた。
良いも悪いもない。
我ながら困った奴だと思うが、それで何とかやってきた。
あの日までは。

ブログをさかのぼって、あの日より前の物を読むと、何とものんびりしている。
それはそれで嫌いではないけれど、
今年を振り返るには3月11日を避けては通れないだろう。

ある人が
「人が一番力を発揮するのは、自分の為でなく、
自分以外の誰かの為に、何かを為す時である」
と言った。

3月11日の後、現実に打ちのめされた後、誰かの為に自分が出来る事。
その「何か」は、やはり歌う事で、曲を作る事だ、と思った。歌に対するアプローチが変わった。今で
も、向上心も、人から賞賛されたい気持ちもある。もちろんある。けれど、今回のツ
アーはこれまでとは違う一体感も、ある。僕は歌っていると同時に、歌わされている。
僕らは歌い手であると同時に一個の楽器だ。その楽器を弾くのは、会場のあなただ。
そして僕は、あなたの想像している(あるいは想像よりも素敵な)音色を出したいと心
から、綺麗事でなく、思っている。未曾有の災害を幸いにも生き残った、という事は
何かしらの意味を(使命といってもよい)持つ。そう思える力をくれたのは、「音楽」
そのものと、そしてあなたの歌を聴きたいという声だった。

世の中の色々な事が変わった。大事なものを失った人もいるだろう。揺らいでしまっ
た信頼も、もう一度確かめられた絆もあるだろう。その中で、僕らの歌は変わらず有
り続けたいと思う。僕は、僕らは、ずっとここにいる。あなたが必要な時に思い出せ
るように。

もう一度聴きたいと思った時、すぐ傍にあるように。聴きたいと思えた時に、出来る
だけ近くで聴かせられるように。だからこれからも、僕らは、色々な場所で歌ってい
く。

今年もゴスペラーズを、黒沢薫を応援してくださったあなたに深く感謝いたします。

いつも心にスパイスを。
では、また来年お会いしましょう!



カテゴリー:黒沢 薫  投稿者:kurosawa  日時:16:25